遺族年金の仕組みや特徴、受給条件
年金加入者が万が一死亡した場合、遺された遺族に対して年金が支払われます。国民年金の場合は「遺族基礎年金」、厚生年金に加入している場合は「遺族厚生年金」が受給できます。
遺族年金とは何か?
遺族年金は年金の中でも万が一の時に、残された遺族の生活を保障するための年金制度です。国民年金、厚生年金、共済年金組合などから要件を満たした遺族に対して給付されます。
基本部分となる国民年金による「遺族基礎年金」と厚生年金などの報酬に比例して給付される「遺族厚生年金(遺族共済年金)」があります。
公的年金の加入期間の2/3以上の保険料の納付または免除されていることが給付の条件となります。
遺族基礎年金
20歳以上のすべての方は国民年金加入者となりますので、未納などがない限りは給付されるもっとも基礎的な遺族年金となります。
遺族基礎年金は国民年金加入中の方が無くなった場合、その人によって生計が維持されていた「18歳到達年度の末日までの間にある子(障害者は20歳未満)のいる配偶者または子に支給」されます。
言い換えると、子供が19歳以上であるご家庭の場合、遺族年金は給付されないことになります。
なお、遺族基礎年金については「夫」はこれまで対象ではありませんでした。これは戦後の「夫が働き、妻は専業主婦として家を守る」という家庭観によるものでした。
共働きが増えた現在、こうしたものは時代にそぐわないということで、平成26年4月以降は「妻」が亡くなった場合も支給対象となりました(それまでは夫が死亡した場合のみ)。
受給金額は、18歳未満の子の数によって変わります。
772800円+子の加算(第1子、第2子は各22万2400円、第3子以降は各7万4100円)
平成26年4月分より。妻と子二人というケースなら77万2800円+22万2400円×2=121万7600円となります。
遺族厚生年金
サラリーマン、法人経営者などが加入している「厚生年金」への加入者を対象とした年金となっています。
厚生年金加入中の方が無くなった時(加入中の疾病がもとで書信日より5年以内になくなった時)、その人によって生計が維持されていた遺族(配偶者・子>父母>孫>祖父母)に遺族厚生年金が支給されます。
- ※子のある配偶者又は子には、遺族基礎年金も併せて支給されます。
- ※30歳未満の子のない妻は5年間の有期給付となります。
遺族厚生年金の受給額は報酬比例の年金額や配偶者の有無などによって異なります。
遺族厚生年金の計算方法
遺族厚生年金の受給額は下記の計算式によって求められます。「平均標準報酬月額」から計算される通り、亡くなった方が高収入であった方ほど、遺族厚生値金の金額も大きくなります。
{(平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの月数)+(平均標準報酬月額×5.481/1000×平成15年4月以降の月数)}×3/4
※被保険者期間が、300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します
ちなみに、概算金額については「ねんきん定期便」より比較的簡単に推測することができます。老齢厚生年金の見込み額のところに、平均標準報酬月額や加入月数などは記載されています。それらをこれにあてはめることで簡単に計算できます。
<例>:ねんきん定期便からわかる遺族厚生年金の計算方法
平成15年3月までの標準報酬月額:40万円、加入月数90カ月
それ以降の標準報酬月額:55万円、加入月数150カ月
40万円×7.125/1000×90=25万6500円
55万円×5.481/1000×150=45万2182円
遺族厚生年金=25万6500円+45万2182円×3/4×300/240(※)=66万4389円
※300/240は加入月数が300カ月未満の調整。
これによって、遺族厚生年金は66万4389円(年額)と求めることができます。
下記条件を満たした場合。40歳から65歳になるまでの間、579,700円(年額)加算
- 夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻
- 遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻(40歳に達した当時、子がいるため遺族基礎年金を受けていた妻に限る。)が、子が18歳到達年度の末日に達した(障害の状態にある場合は20歳に達した)ため、遺族基礎年金を受給できなくなったとき。
25年以上の年金加入期間があれば厚生年金から外れても給付対象
遺族厚生年金は基本的に、厚生年金加入者が対象です。
一方で、サラリーマンを続けていたけど、その後退職(独立)するなどして第1号被保険者(個人事業主、無職など)となる場合もあるでしょう。そうした場合の厚生年金は払い損になるのでしょうか?
これは「25年」という加入期間が影響します。老齢年金の受給資格期間が25年以上ある場合は、死亡時点で厚生年金に加入していなくても給付されます。
ちなみに、年金全体で25年です。免除されている期間については加入期間に通算されます。
※老齢年金の受給資格は10年に短縮されていますが、遺族厚生年金の資格は短縮されていません。
遺族年金の受給イメージ(全体像)
上記の図を見てもらうと分かりやすいかと思います。
子2人の妻がのこされて、会社員の夫が死亡した場合の遺族年金のイメージ図となります。
子どもが18歳になるまでは遺族厚生年金(報酬比例部分)+遺族基礎年金+子の加算を受け取ることができます。また、多くの場合では「中高年寡婦加算」に該当することになるかと思いますので、遺族基礎年金が終了した後も「中高年寡婦年金」を受け取ります。
そして65歳を以降になると妻の老齢基礎年金の受給が開始されるというものです。
遺族年金は大きな保証。生命保険と一緒に考える
簡単に計算してもらうとわかるかと思いますが、遺族年金は、遺族にとってかなり大きな保証となります。総額で受け取れる遺族厚生年金+遺族基礎年金を考慮すれば数千万円単位の遺族保障となります。
生命保険の保証額(保険金額)などを考える時はこうした遺族年金についてしっかりと考えた上で保証額を決定しましょう。